読書録:『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」』


雑誌の対談で出会って以来、親友として家族ぐるみで親しく付き合っていたという2人。ちょっと前にNHKで山中さんの特集をやっていたときに、職場の部屋には今も平尾氏のサイン入りユニフォームや2ショットの写真が飾られていて、「今でも助けてあげられなくてごめんねという気持ちでいる」と語っていたのが印象的だった。

この本では、山中さん本人、そして平尾氏の未亡人が、それぞれ2人の交流について書いていて、後半は、出会いとなった対談の記事が再録されている。

ガンが見つかってすぐに山中さんに相談した平尾氏。山中さんは専門外ながら、いろいろなツテを頼って情報を集め、ベストな治療法を必死に探したらしい。山中さんほどの人が「自分だったらどうするか、自分の家族だったらどうするか」という視点でくれるアドバイスなら、さぞかし心強かっただろう。

その甲斐があったのかどうかは分からないけど、余命数ヶ月と言われていたのが、結局1年ちょっと闘病生活は続くことになった。

本に出てくるエピソードは、どれも2人の人となり、そしてつながりがよく分かる。平尾氏の方は余りよく知らないけど、

53歳という若さで、日本で開催されるワールドカップも見ずして亡くなってしまったのは本当に心残りだったとは思うけれど、人生の一番最後に、信頼できる友と巡り会えて闘病を支えてもらえたのは、幸せなことなのかな。

そして、こういう本を残してもらったことで、ファンをはじめ、読んでる人みんなの心の中に、平尾誠二という人の記憶が残るわけだしね。

2018.02.18 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『知られざる皇室外交』


社会派ブロガーとして知られるちきりんさんが、「日本人としてのMUST READ」として強くオススメしていた本。

ちきりんさんは、昨今の女性天皇問題や天皇の譲位問題について、みんな感覚的にアレコレいうけれど、我々日本人は皇室がどんなものかを本質的に理解してない! だから、この本を読んでそれを学ぶべし!とおっしゃるので読んでみたというわけ。

この本では、今上天皇の皇太子時代にまで遡り、どんな風に日本の外交に貢献してきたかということを書いている。戦後どん底にまで落ちた日本の外交的地位を保つために、政府にはできない多大な役割を果たしてきたと。

晩餐会でのルールなど、知っているようで知らない王室外交の決まり事や、その時代その時代で日本が世界でどんな地位にあったのかを解説しながら、数々の足跡を振り返る内容は、興味深かった。

特に、日本とは王室同士関係の深いことで知られるオランダも、戦後は半日な気運が強かったという話。イギリスに訪問の際も、半日の世論を慎重に考慮したとか。韓国や中国ならともかく、遠くヨーロッパの国がなぜ?と正直不思議な気がしたけれど、アジアに植民地を持っていたこれらの国は、自国の兵士が日本軍の捕虜になって非人道的な扱いを受けたなど、強い反発があったらしい。従軍慰安婦もいたんだとか。そういうことって、あまり日本では伝えられていないような気がする。これらの国々は、自分たちだって植民地を持っていたぐらいだから、あまり他国のことばかり一方的に批判できないという事情もあったのかもしれないけれど。

というような戦後の歴史については、知られざる一面が描かれていてとても勉強になった。同時に、筆者やちきりんさんが言うように、日本の皇室がどれだけ価値のあるものなのか、というのもよく分かる。

ヘソマガリなので、あまり礼賛ばかりされるとちょっとモヤモヤしてしまう部分はあるけれど、実際今上天皇の行動には日頃から立派だなと思う事も多いから、反論はしない。

ただ、これを読んでの解説としてちきりんさんが繰り広げる、女性天皇反対論については、まったく共感できない。「長く続いてきた伝統を守るために」というけれど、時代と共に皇室のあり方だって変わっていっていいのではないかと、私は思う。

女性天皇を禁ずるのは性差別だ!というなら、血統で決まるのは差別ではないのか?っていうけれど、それとこれとは話が別というか、論理の飛躍というか。血統が「男系」じゃなくちゃいけないっていうことにはならないよね?

ちなみに「女性天皇」と「女系天皇」の違いについて。日本の皇室の伝統として、女性天皇はいるけれど、女系天皇はいないと。分かりやすく言うと、もし愛子さんが即位すれば女性天皇だけど、男系の女性天皇。でも愛子さんの息子が即位すれば、「女系の男性天皇」だからダメなんだって。だから、もし無理矢理愛子さんを天皇にしちゃったら、あえて結婚しない、子供を産まないという選択をするかもしれず、それはお気の毒って言うんだけど、それも、うーむという感じ。

今までちきりんさんの言論にはわりと共感できる部分が多かったんだけど。今回は?だな。ただ、「日本人は皇室のことをもっとよく知るべき」という意見には賛成。そしてそのためにこの本が役立つことも認める。なので、皇室に興味のある方は、ぜひご一読を。

2018.02.15 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『みちづれはいても、ひとり』


アラフォー女性を主人公にした小説。

バツイチ子持ちの男性と結婚した弓。子供はいない。先妻の娘とのやりとりに嫌気がさして家を出たものの、夫も失踪してしまい離婚手続きもできないまま。そんなある日、アパートの隣室に住む同年代の独身女性楓に誘われ、旅に出る。行き先は、目撃情報があった夫の故郷の島。

弓と楓、それぞれの目線で交互に島での生活が描かれる。奔放な楓、自分の母親との葛藤の思い出、なぜか敵対的な夫のハトコのシズさんとのアレコレ、そして夫との再会。

激的な展開があるわけでもなく淡々と進んでいく物語で、登場人物にすごく共感できるわけではないのだけど、なんだか引き込まれて読んでしまった。すごくさらっと書いているようで、なんだか考えさせられるような。タイトルも示してるように、人との距離の取り方について、なのかな。異性同性にかかわらず。

なんかうまく書けないけど、同年代女性だったら分かってもらえるのでは。
Amazonのレビューは1個しかなかったけど、読書メーターに同じような感想がいっぱいあったので、興味ある方は参考にしてみて。

2018.02.09 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『金メダルへの挑戦』


時節柄?スケートの話ばかり続くけれど。。

こちらの本は、元日本のフィギュアスケート連盟の強化部長で、今はANAスケート部の監督として羽生くんのサポートに当たっている、城田憲子さんというオバサマが出した本。

城田さんはフィギュアスケート界では有名な人で、マスコミでもよく見かける。昔、スケート連盟の不正資金問題に絡んで引責辞任したこともあり、一般的にあまり評判は良くなかった印象。ファンの間でも、連盟のカネ稼ぎのために選手を酷使するなど感情的な陰口を書かれていたり。

でも、出版後なかなか評判が良いので、こちらも買って読んでみた。

今から遡ること数十年のアルベールビル五輪。メダルなんて無縁だった日本のフィギュアスケート界に突如現れた天才伊藤みどり。彼女に金メダルを取らせることができなかったのは、まわりのサポートが未熟だったせいだ……という反省から、日本人に金メダルを取らせたいという一心で歩んできた日々が綴られている。

伊藤みどり1人に背負わせた負担が大きすぎたという反省から、毎年全国から優秀な子供を集めた「野辺山合宿」が始まり、その結果、その後のフィギュア大国へ結びついたというのは有名な話。

そのプロジェクトの中心人物としての舞台裏が明かされる。特に、ソルトレイクで4位になった本田武史、トリノの荒川静香、そしてソチの羽生について、それぞれの五輪までの話を詳細に振り返っているところは、とても興味深い。

荒川が五輪本番直前にコーチを変えた話、羽生がカナダのオーサーコーチのところに移った話は、選手本人が望んでそうしたかのように報道されていたけれど、それをお膳だてしたのは彼女だったと。

イジワルな見方をすれば、なんでもかんでも「私ががんばった」感が感じられなくもないけれど、たぶん実際のことなんだと思うし、裏方がこうやって必死にサポートしてくれたから、今があるのだなということは、素直に納得する。選手によっては、意見が合わなかったりして、時に迷惑だったりすることもあるかもしれないけれど。

ただ、「この選手に金メダルを取らせたい」と狙いを定めると、他の選手は二の次三の次になっていたようで、それを苦々しく思っている選手もいるだろうということは、自分でも認めている。特に、荒川のライバルで、トリノで4位だった村主章枝に対しては名指しで懺悔している。

伊藤、本田、荒川、羽生以外には、村主、高橋、安藤美姫についても触れられているけれど、真央ちゃんについては、トリノ前の荒川を脅かした選手という扱いで、特に彼女がどう関わったかという話は出てこない。

元々私が一番気になっていた、なぜ彼女がANAの監督に就任したのかという話は出てこなかった。ANAの監督というけれど、羽生以外に選手いないみたいだし、要は専属サポートってことよね。カナダのオーサーチームがばっちり見てくれてるのに、何するんだろー?と思ってたけど、この本を読んだ感じとしては、要するにプロデューサー的な役割をするのかな。

いずれにしろ、日本のフィギュアスケート史を振り返る意味でもなかなかおもしろい本だった。


2018.02.08 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』


今は、日本の最大の課題ともいわれる少子高齢化。それに起因するいろいろな問題が指摘され、一部はすでに現実になりつつある中で、改めて、今後どういうことが起きるのかを「年表」という形で具体的にまとめて、警笛を鳴らしている本。

おばあちゃん大国になる、火葬場が不足する、国立大学も倒産する、介護離職が大発生する……など、だいたいは既にあちこちで言われていることだが、それを数字を上げて具体的に解説している。

目当たらしかった視点としては、東京に集まってきた「かつての若者」が年を取り、地方に住む高齢の親を呼び寄せ、やがては自分自身も年を取り、その一方で子供の数は少ない、など都会こそが近い将来高齢者だらけの街になってしまうという指摘。

少子化と高齢化は実はまったく違う問題であって、そのための施策もまったく別というのは、その通りだ。少子化で人口が減っていくことによって起きる問題をなんとかしなくてはという話とは別に、高齢者だらけでもなんとかやっていける社会システムを早急に作らなくてはというのは、まさに今すぐなんとかしなくてはならない問題だ。

読み進めていくと、どれもこれも本当に深刻な問題ばかりで、「もう日本だめじゃん」って憂鬱になってくる。じゃあどうすればいいの?という声に応えるための筆者が考えた「処方箋」なるものも書かれてはいるんだけど、本のボリューム的には前半の1/3ぐらいしかなくて、その内容的にもあまりパッとしたものはなく、正直うーむという感じ。

前半の部分で、「巷でこうすればいいと言われているけれどそう簡単な話ではない」としていろいろな意見を否定している割には、自分の述べている意見もつっこみどころがありそうな感じ。

ただ、この本のあとがきを読むと、筆者はこの本を若い人にこそ読んで欲しいと思って書いているらしい。私のように自分も年を取ってきて高齢者の問題が他人事じゃない人間にとっては当たり前に知ってることでも、「若者」たちには目からウロコのこともたくさんありそうだ。そういう読者に対して、現実を分かりやすく伝えるという意味では良い本なのかもしれない。読みやすく書かれているし。そういう意味では、処方箋の部分はオマケとして、現実認識を促す効果はあると思う。

もうすぐ高齢者なオバサンとしては、未来ある賢い若者たちが、本気になって良い知恵を考えてくれるといいなぁ、なんて他力本願に思ってしまったけどね。


2018.01.28 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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