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読書録:『ディア・ペイシェント』


この前読んだ『サイレント・ブレス』(そのときの読書録はこちら)の著者南杏子の医療小説。

Dear patient。親愛なる患者さま。というタイトルのこの作品は、モンスターペイシェントを扱ったもの。主役はサイレント・ブレスと同じく若い女性医師。論文を書くよりももっと患者と接したいと、大学病院をやめて街の総合病院での勤務を選んでいるという設定。

しかし、そこでは「病院はサービス業」のポリシーのもと掲げられる「患者様プライオリティー」を厳しく問われる。銀行出身の事務長が、医師たちにプレッシャーをかける様は、まるでドクターXとかのドラマに出てきそうな世界だ。

日々遭遇するクレイマー患者、そして、彼女をネチネチと狙い撃ちしてくる謎の患者、同僚の医師たちにふりかかる事件など、ミステリー仕立てな要素もからめ、物語は進んでいく。

こんなヒドイ患者いるの?と思われるような例もたくさん出てくるけど、Amazonの書評を読んでいる限り、「ありえることばかり」という現場の声も多い。著者自身も医師であるわけだし、ここに書かれているのは、実際に彼女が体験したり、その同僚から見聞きした事例ばかりなのかもしれない。

患者の立場では、つい、病を診て患者を見ない冷徹な態度を批判したくなることが多いけれど、これを読んでると、本当に医師も大変。絶対自分はやりたくないと思っちゃう(笑)。

もちろん、実際にはこんな患者ばかりではないだろうし、モンスター医師もいるのも事実。医者もいろいろ、患者もいろいろと言ったら、身もふたもないけれど。

この前読んだ『医者の本音』(そのときの読書録はこちら)もそうだけど、日々患者のためを思って忙しく働いているのに非難されることばかりではたまらない、医者の実情も知ってほしいという思いのなのかな。

皮肉なのは、この物語に出てくる病院では、建物をきれいにリニューアルした後に、クレイマーが増えたという話。「患者様」などと呼ばれると、今までは言いたくとも言えなかったことが言えちゃうってあるのかも。物語では、それでも経営のためにはサービスを改善して患者を集めなければ!と必死なわけだ。

問題提起のルポルタージュだと、厳しい現実だけが指摘されて終わるけれど、これは小説なので、一応前向きな話で終わる。いろいろな事件を経て、今日もがんばって働こう!みたいな。なので読後感は悪くない。実家で医院を営んでいる主人公の父親が、医師のあるべき姿みたいなものを諭すセリフは重みがあるし。

前作「サイレント・ブレス」もそうだけど、これもドラマ化したら面白そうな話。いずれ、そういうこともあるかもね。

2018.10.14 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録『旅屋おかえり』


原田マハの小説。原田マハは、『暗幕のゲルニカ』と『ジヴェルニーの食卓』を読んで好きになり、その後偶然読んだ『本日は、お日柄もよく』とうい小説も同じ作者だと知ってびっくり。(そのときの読書録はこちら

どうやら、アート小説ではシリアスな展開なのに、普通の?小説になると一転コメディタッチとまではいかないけど、かなりライトな雰囲気になるらしい。私としては美術ものが好きなんだけど。

この本は、美術ものではなく、ライトな小説の方に入るんだけど、旅、というキーフレーズに反応して読んでみたら、この前の「本日は、お日柄もよく」よりは、ずっと面白かったと思う。

主人公は、売れない元アイドル。レギュラーで持っていた旅番組が自分のチョンボで打ち切りに。弱小事務所の危機を救うべく、成り行きで「旅屋」という仕事を請け負うようになる。それは、旅に行けない人に代わって指定された場所へ行き、願いを叶えてくること。

難病に冒された女性に代わって東北の桜を見に行き、その流れで崩れかけていた親子の絆を取り戻すのに協力するとか、生き別れになった妹の娘に会いに行ってほしいという依頼とか。どちらも、ミステリータッチな筋書きと人情ほろりな展開。それを通して、「旅」っていいね、と思わされてくれる。

いわゆる「旅行」ばかりしてる私だけど、たまにはこんな「旅」もしてみたいなぁと、ちょっと思っちゃったりね。それこそ一人旅しながら、電車の中でのんびり読むのによいかも!


2018.10.09 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『コンビニ外国人』


最近のコンビニでは当たり前になった外国人店員。コンビニに限らず、日本各地の工場や農村、漁業の現場では、すでにかなりの数の外国人が働いているという。そんあ日本で働く外国人を取材したルポルタージュ。

なぜコンビニの店員は外国人ばかりなのか? その答えは人材不足で日本人が集まらないから。大手のチェーンでは、母国のスタッフを使った研修などその受け入れ体制も整ってきていて、彼らにとっても働きやすい職場ではあるらしい。

その多くはアジアからの留学生。彼らが日本にやってくるのは、経済格差によるジャパンドリームを夢見ることに加えて、留学生ビザで労働ができる条件が日本はゆるいことも大きな理由になっているそうだ。つまり、日本なら留学生という名目で働ける。

実際は週に28時間という制約があり、それを破ると強制送還になったりするけれど、留学生ビザを発行する日本語学校への規制が遅れたために、かなりいいい加減な学校もあり、実は働くことが目的でやってくる人も多いんだとか。

もちろん、真面目に勉強してがんばっている留学生の話もたくさん出てくるし、ブローカーに多額の借金があり、かなり切迫した経済状況に置かれている例も出てくる。

ここで訴えている問題は、日本では今移民の受け入れに賛否両論があるけれど、現実問題として、すでに外国人労働者に頼らなければ立ち行かなくなっているということ。そして、こうやって外国人がやってきてくれるのも、東京五輪のちょっと後までぐらいかもしれないという。日本がいつまでも憧れの対象であり続けることはないのだと。人口は減るばかり、若い人がいない、外国人もやってこない。その先、日本はどうなるのか???

この本の最終章では、人口減少に悩む地方の小さな自治体による独自の取り組みも紹介されている。印象的だったのは、「外国人は苦手」と言っている時代ではなく、もはや「多文化共生は必修科目」と語っていたこと。そして、これからはピンチヒッターとして地方を支えてくれる人材の奪い合いになるだろうとも。そのときに選ばれる街になるように、今から備えるのだという。

先日の台風では、外国人向けの情報サイトを、NHK総合のニュースの中で英語で案内するなんてこともしていた。今後、何かあるたびに、こういうことも変わっていくんだろう。

どこの国でも外国人住民が増えることは混乱を招くだろうけど、特に日本のような「空気を読んで、自分からマナーを守る」ことを要求される社会は、外国人にとってハードルが高いだろうなとは思う。でも、逆に考えれば、「ちゃんと説明しないとわからない」ということが増えれば、日本人同士のコミュニケーションも変わってきたりするのかなとも思ったり。

グローバル化はもう避けられない以上、それが良い変化をもたらしてくれることを祈るばかり。

2018.10.03 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『1ミリの後悔もない、はずがない』


青春小説、なのかなぁ。登場人物がクロスして、つながってるような、いないようなの短編集。

主軸は、貧困家庭で育った主人公の少女の、中学時代の淡い初恋。他の人とは違う大人びた感性を持つ主人公のキャラが独特の世界を生み出している。出版社のセールストークには「ひりひりと肌を刺す恋の記憶。」とあったけど、そんな感じ(←丸投げだ)。

最後の短編では、大人になった主人公を描き、最後の最後で初恋の顛末の謎解きがされる。ここに泣いたという感想も見かけるけど、残念ながらもうピュアじゃないおばさんは泣けなかった(笑)。でも、なんか冬ソナを見たときのことを思い出した。(遠い目)

好きな人はすごく好きかもしれない、特に若い人は。私も、すごく好きとは言わないけど、空気感はすごく印象には残るし、それなりに良かったと思う。

なんかあいまいな読書録になっちゃったけど、書いておかないときっと後で忘れちゃうので(笑)。

2018.09.30 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



読書録:『サラリーマン2.0』


現役の会社員を続けながら、「週末だけで世界一周」までしちゃったという、自称「リーマントラベラー」が書いた本。

大学卒業後、広告代理店に就職し、「社畜」のような2年間を送っていた著者が、憧れのNBAのチケットを入手したことで、初めての一人海外旅行へ。GWを利用したこの旅が人生の転機となり、せっせとお金をためては、週末海外旅行三昧の生活を始める。

そんな旅の様子が綴られてるんだけど、これが面白い。フツーの名所旧跡、絶景を見に行く旅ではないところが。世界遺産もグルメもなし。そもそも行き先が、ロサンゼルスや香港はともかく、キューバ、イラン、コンゴ、サウジアラビア(普通は観光ビザが出ない)など。そこで見たもの、体験したこと、触れ合った人。行き当たりばったりながら、数々の「奇跡」に恵まれて唯一無二の旅となる様子は、読んでる方までワクワクしてくる。

「自分もここに行きたいなぁ」と思う旅ではないけれど、純粋に他人事として読んでるだけでもとても楽しい。そして、その旅で見たもの経験したこと、出会った人によって、人生観が変わっていく様子がリアルに伝わってくる。

海外旅行なんて時間のある人がやること。そんな先入観をふっとばし、会社員だって、休みがとれなくたって、その気になればなんだってできるんだ!と訴える。それは、旅行に行く行かないはともかく、仕事に縛られて何も見えなくなっている人への大きなエールとなっているところが、この本の最大の魅力なんだと思う。

いろいろな国を回って彼が気づいたのは「生き方には選択肢がある」ということだったという。

印象的だったのは、「一番好きなのは帰りの飛行機の中で過ごす時間」と言っていたこと。非日常から日常へ戻る間の「電波の入らない」時間帯は、旅で得た気づきを消化する「自分探しの旅」の時間だという。単純に「あ~楽しかった」で終わらせないからこそ、この旅の経験が、彼の人生を幸せにする効果を上げているのだろう。

もちろん、週末弾丸旅なんて、若くて体力があるからできること。ノープランでイランとかアフリカとか行っちゃうなんて、若くても女の子にはハードルが高い。自分の娘にはすすめられない。男性である著者だって、これだけいろいろなところに行ってれば、きっと危ない目にもあってるはず。そういう話はまったく出てこないところが、ちょっとキケンなんだけど。これを見て安易に出かけちゃう人がいるのでは。。なんて心配しちゃうのは、自分がもうおばさんだからかな。

でも、読み物として、何かのカラを破るきっかけにはなるかもね!


2018.09.28 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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