読書録:「定本納棺夫日記」

定本納棺夫日記 2版定本納棺夫日記 2版
(2007/07)
青木 新門

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いわずとしれた、映画「おくりびと」の原作本と言われている本。
「と言われている」と書いたのは、著者が原作本と呼ばれることを拒んでいるから。

その辺の事情はともかく、もっくんがその昔この本を読んで感銘し、映画化の話を持ち込んで実現したのが「おくりびと」だというのは有名な話。

読んでみると、期せずして納棺夫という仕事に就いてしまい、最初は戸惑いながらも次第にその職に誇りを持つようになるという基本はまったく同じ。元オーケストラの団員だったとか、お風呂屋さんのオバサンとかのエピソードは映画オリジナルのものみたい。

もうひとつ違うのは、映画では、山崎努演じる社長に教えられて覚えていくことになってたけど、この本を読む限り、この人は独学?で覚えていったのか、師匠にあたる人の話は一切出てこない。

登場するエピソードの中で、横たわったまま息絶えた人を座棺に入れるむずかしさ、昔は腰が曲がったお年寄りが多かったから座棺の方が都合がよかったこと、など、へぇ~と思うこともあった。

なぜ「納棺夫」が本を出してるの?っていうのが、最初不思議だたんだけど、どうやらこの人はもとは作家を目指していた時期があったらしく、文章を書く才能も持ってるようだ。この「日記」には、日々のことを淡々と綴ると共に、宗教などについていろいろな本を読んだり勉強したりしながら、死生観などを深めていくあたりの話も描写されている。というか、それこそがこの本を書いた本当の目的らしい。

正直、その辺のくだりは、いまひとつピンと来ないモノがあったかな。やはり日々「死」と接していると、いろいろ考えるようになるのだなぁとは感じたけれど。こんな浅い読み方しかできないのは、私自身が、本当に大切な人の死に接したことがないからなのだろう。

この「定本」には、納棺夫になってからの日記とは別に、それ以前に書いた短編小説も2編収録されている。それは、作者自身の幼い頃満州で過ごした体験を綴ったもの。終戦後、引き上げまでの間、弟、妹と母と4人で悲惨な暮らしをする中で、弟と妹を目の前で失い、その遺体を始末するシーンなども描写されており、この人が、幼い頃から「死」を身近に感じる経験をしたことが、強烈な原体験となっていることが想像できる。

ひもじさのあまり、妹が亡くなるシーンなどは、まるで「火垂るの墓」そのもの。
ということはつまり、あの時代には同じように悲惨な体験をした人がたくさんいたんだろうなと思うと、それってやっぱりスゴイことだと改めて思う。ほんの60年前には、日本中の人が死を身近に感じて生きていたんだよね。

映画では、もっくんは今を生きる若者として描かれているので、その辺の背景というのはまったく無関係になっていて、そこが本と映画の一番大きな違いなのかもしれない。

作者自身、映画「おくりびと」を否定しているわけではないのだけれど、なぜ著作権を放棄してまで原作者とされることを拒んだのか、という話は、作者自身のHPに書かれているので、興味のある人はどうぞ。

映画を見たことのない人は、ぜひ一度見てみて。いい映画です。
おくりびと [DVD]おくりびと [DVD]
(2009/03/18)
本木雅弘広末涼子

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2009.07.30 | | コメント(0) | トラックバック(1) | 読書録



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