読書録:『欧米に寝たきり老人はいない』



最近よく話題になる、治る見込みもない高齢者に点滴や胃ろうをして延命措置をし続けることに疑問を投げかけるという本。

著者は内科医の夫妻。2007年スウェーデンの病院を見学して、いわゆる寝たきり老人がいない、つまり日本では当たり前になっている延命治療が一切行われていないことに衝撃を受けたという。

この本では、現在の日本の終末医療の現状、そしてそうならざるを得ないのはどんな理由があるのかという分析、そうした現状を現場の医療関係者はどう見ているか、そして海外での事例紹介、今後への提言などがまとめられている。

元々は読売新聞の医療サイト、ヨミドクターで連載されたブログをベースにしているということで、ブログ掲載当時の読者から寄せられたコメントも差し挟みながら、いろいろな立場の人がこの問題をどう考えているかの声を紹介している。(そのヨミドクターで書籍化に際して著者夫婦にインタビューした記事はこちら

この問題は、最近よく話題にされることも多く、ほとんどの人が基本的には「この現状はおかしい、どうにかしなければ」という認識を持っているはず。無駄な医療費という社会的な問題もあるけれど、それより何より「苦痛を抱えたままむりやり生きながらえされる」というのは、誰だって自分の身のこととなったら、断固として拒絶したいと感じると思う。

この本によると、ホスピスなどで終末医療の緩和ケアが行われているのは、現状は癌などに限られているそうだ。その結果、苦痛を緩和することよりも、とにかく「死なせない」ために、さまざまな処置が行われているという。よく聞く痰の吸引とかの処置も、認知症などで意識がなくても体を震わせるほどの苦痛を伴うものであり、医者としてもまるで拷問をしているようで辛いと書いている。

そんな、痛い、苦しい思いをするのは、嫌だよ~~~~。

この手の問題でよくいわれるのが、とにかく日本の医師というのは、患者の死を「負け」と捉えているからだと。どんな手をつくしてでも命を救うというのは、医者としての基本なのだろう。でも、人間いつかは絶対に死ぬのだから、それが遅いか早いかという問題と同じぐらい、どんな風に(苦しまないで)生きられるのかという問題も大事だよね。人生は長さだけじゃなくて質も同じぐらい大事なのではと。

そういう救命を目的としない、安らかに眠ることを目的とした、終末専門の医者を育てるところから必要なのかも。

今から先苦しんで3年生きるなら、苦しまないで今すぐ死んだ方がいい、と私なら思う。治る見込みがないまま、苦しみつつ日々死に向かっていくのを待っているなんて、まさに生き地獄。

それでも、生きていてくれるだけでいい、体温があるだけでもいい、と、存命を臨む家族がいるケースもある。生きててくれれば年金がもらえるから、なんて理由は言語道断だとしても、純粋にその人に死んで欲しくないと思っているとしても、そんな苦しみを与えてまで生かしておくのは、やっぱりエゴだと思う。

その点について著者は、「自分がされたくないと思う事は家族にもしない」「自分がしてもらいたいと思うことをしてあげる」というアドバイスをしている。そして、自分の意思を、ハッキリと示せるうちに文書で残しておくことも。

とはいえ、現実には、文書もあり家族が納得しても、後々の訴訟を恐れて延命措置をやめてもらえないケースも多いらしいんだけど。

法的、構造的にも問題は山積みだけど、一番重要なのは国民みんなのコンセサンスが得られて、社会の風潮がそれを認める方向に動き出すことなのかと思う。そうすれば、自ずからいろいろな縛りはとれていくのだろうから。

どうか、私が老人になるまでには、苦しまないで死なせてもらえる環境に近づいていますように!


2016.02.27 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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