読書録:『日本語の絶対語感』


この世に生まれた赤ちゃんが言葉を覚えるのは理屈じゃない。繰り返し、母親など身近にいる人から語りかけられることによって、刷り込まれるようにして覚えていく。そうやって身に着けた母語の感覚を、筆者は「絶対語感」と呼ぶ。

私自身は日本語と比べられるほどちゃんと話せる外国語はないのでよく分からないけど、いくつかの外国語をマスターした人にとっても、やはり生まれながらにして覚えた「母語」との差は、埋めがたいものがあるだろう。

たとえば、日本人が日本語について外国人に「なぜ?」質問されても、ちゃんと答えられないことって多いと思う。「なんでって言われても、そうは言わないなぁ」としか言えないことがほとんど。学校の授業では五段活用だのなんだのって習うけど、それは後付けの理屈であって、そんなことを考えて普段言葉を使っているわけじゃない。

「何でか分からないけど」分かるのが「絶対語感」。そして、それは文法だけじゃなく、言葉の持つニュアンスなんかもそう。原稿を書いていると、単語のチョイスから、文章のリズム、論旨の展開とかいろいろなことを考えるけど、そういうのも「絶対語感」なんだろうなぁと思う。

で。この本はその「絶対語感」が人間形成に果たす役割にも触れながら、親が子供の絶対語感を形成するために必要な子育て方法などについて書かれている。

普通日本人が発音できないような音も、子供時代からなら問題なく発音できるように、「子供は言語的に万能能力をもって生まれてくる」のだから、「しっかりしたことばを身につけ、子どもたちにすぐれた教育をすれば、天才的能力を発現させることも可能である」「絶対語感を深化させることができれば、新しい知的人間が生まれることさ期待してよいと思われる」。なんて言われたら、若いおかーさんたち、張り切っちゃうかもね。

とはいえ、子供時代から英語教育などをするのには反対で、あくまで日本語の絶対語感をつけさせるというのが本書の主張なのだけれど。

本題とは別なところで印象に残ったのは、人間の赤ちゃんは聴覚が一番最初に発達するという話。よく胎教にモーツァルトがいいとか言われる所以だ。

一方で、意識不明になっちゃった人も、最期まで耳は聞こえてるから、話しかけてあげるといいという話(これはこの本には出てこない)も考えると、聴覚って人間にとって一番基本的というか、原始的な知覚なのかなぁと。そういえば、目がすごく悪い動物はいても、耳がすごく悪い動物って聞いたことがないような。そう考えると、聴覚というのは生物にとっての基本なのかも?

と話がそれたけど。その子育て法に関する具体的な指摘については、なんせ90歳を越えたご老人の話なので、若干時代にそぐわない点もあるように思えたけど、「絶対語感」という概念は興味深かったと思う。

2016.05.19 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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