読書録:『スクラップ・アンド・ビルド』


一昨年の芥川賞受賞作。又吉直樹の『火花』と同じ年ね。ちょっと前にNHKのドラマでもやってたらしい。

主人公は休職中の28歳男性。勤めていた会社を辞め、母と祖父と3人で暮らす自宅で、資格の勉強をしつつ、ときに就職の面接に出かけたり、彼女とデートしたりする日々。父は亡く、母は働いているため、昼間は祖父とふたりきり。その祖父は、あちらが痛いのなんのと愚痴をこぼしては「これ以上みんなに迷惑をかけたくない。早く死にたい」というのが口癖。

そんな祖父の「望み」を叶えてやろうと彼が考えたのは、「過保護介護」で自活能力を奪い、一日も早く静かな死を迎えさせてあげること……。すわ、ミステリー?かと思いきや、事件は起こらず、淡々と介護の日常が続いていく。

認知症とまではいかないまでもボケの進んでいる祖父は足下もおぼつかなくて、入浴も見守りが必要。週に何度かはデイサービスも利用している。5人の子供の家を点々とたらい回しにされて、今は故郷を離れて肩身の狭い思いで暮らしている。実の娘(主人公の母)には、時にキツイ言葉でののしられる。一日何もすることもなく、楽しみもなく、ベッドでぼーっとしている姿を見て、「望み通りに」死なせてあげたいと大まじめに考える様は子供っぽくて滑稽にも見えるけれど、本当に優しい青年なのだ。

主人公の考えは、客観的にも共感するところがある。彼は自分が介護から逃れたいからではなく、純粋に祖父のことを考えているけれど、自分のためにも「早く死んで欲しい」と思っている家族は、現実にはたくさんいるだろうし、そう思われてると自覚している老人もたくさんいるんだろう。

「人の世話になってまで長生きしたくない」って誰だってそう思う。でも、そうならざるを得ないのが今の世の中。これから先、父や母の看取りを経験したら、私は自分自身の最期について、どんな風に思うようになるんだろう。

老人の介護というのがテーマではあるけれど、重くなりすぎることなく、淡々とその方面の問題について考えさせられる作品だったように思う。









2017.01.25 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 読書録



コメント

そういう話だったのか~。
サイン本持ってるんだけど(笑)まだ読んでないわ。
いけないいけない。
又吉と一緒に受賞で最初は気の毒って思ったけどやっぱり逆にそれで有名になったよね。
そしてバラエティに出まくるようになって変人っぷりがウケて、私のように読んでみようと思う人も増えたでしょうね。
そうかそうか。うん。今度読んでみます。

2017/01/26 (木) 00:46:43 | URL | YUcana #jcOaHd1Q [ 編集 ]

YUcanaさんへ

あ、この著者有名なのね。あさイチにでも出てくれないと私の視界には入ってこないので、全然知らなかった。物語そのものは、父親の介護経験があり、息子もいるYUcanaさんなら私よりもっと興味深いかも。短くてすぐ読めちゃうから、おうちにあるなら、M1君が読んだ感想も聞いてみたいわ。

2017/01/26 (木) 14:13:31 | URL | びっけ #- [ 編集 ]

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