読書録:『医療にたかるな』


財政破綻した夕張市で「医療の再生」に取り組んだ経験から、日本全体の医療問題への警笛を鳴らした本。

北海道生まれの著者は、薬学部を卒業後一度は薬剤師として働いた後、医学部に入り直して医者になったという変わり種だ。各地の地域医療に取り組んだ流れで、誰も引き受け手のいなかった夕張市民総合病院を引き継ぎ、その再建に努めた。

著者曰く、夕張の破綻の背景には、炭鉱が栄えていた時代に吸った甘い汁の味が忘れられない「たかり体質」があるという。これについては他で話を聞いたことがないので、そう言い切ってしまうことの善し悪しは、私には自信がないけれど、諸外国と比べても、日本人が健康保険制度に甘えすぎているという指摘はある意味正しいと思うし、行き詰まりが見えてきた今、一人ひとりの医療に対する意識改革というのは必要なことも事実だと思う。

現状を打破するためにとにかく、夕張で彼は、まずは住民の健康意識を高めたり、医療関係者や行政の側の意識改革から始めて、ひとつひとつ取り組んできた。その過程は、よそモノとしての白い目だったり、既得権からの反発だったりということと闘いながら、かなり険しい道だったようだ。

本の中では、かなり具体的な批判もあったりして、敵も多いんだろうなと思わされる。けれど、前書きでも宣言しているように、批判は覚悟であえて厳しいことを書いているということのようだ。

そして、この本の目的は、夕張の人を批判することではなく、夕張は少子高齢化に悩む日本の縮図であり未来図でもあるという考えからの、日本全体への問題提起でもある。

この本は2013年に出版されたもの。近況を調べようとと思ったら、なんと今月11日に亡くなっていた。白血病だったらしい。合掌。

闘う医師・村上智彦さんが残してくれた「医療」に対する姿勢





2017.06.08 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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