読書録:『家族よ、ボケと闘うな!』


尼崎で終末医療を行っている医師と、市役所で介護保険行政に携わっている公務員とが、往復書簡という形で、認知症の老人にまつわる思いを書いた本。すべて口語調で語りかけるように分かりやすく
書かれている。

医師の長尾さんという人は、多数の在宅看取りをしている経験から、平穏死に関する本をたくさん書いていて、私も何冊か読んでいる。(『痛くない死に方』、『胃ろうという選択、しない選択』、『抗がん剤 10の「やめどき」』など)

一方の近藤誠さん。名前を見て「この人知ってる!」と思ったかもしれないけど、たぶん違います(笑)。1996年に『患者よ、がんと闘うな』という本が大ベストセラーになり、がんの放置治療推進論者(熱狂的信者がいる一方で、ほとんどの医療関係者からは「とんでも」扱いされている)とは、同姓同名のまったく別人。それで、この本のタイトルも、そのベストセラーをパロったというわけだ。

中身の方は、老人の認知症ってそもそも病気扱いするべきもなの?という視点で語られる。二人とも認知症の専門医ではないと断った上で、かかりつけ医、支援する行政側という立場で実際にたくさんの認知症患者と関わってきた体験から、病気と捉えて治そうとするのではなく(そもそも治せる薬は今現在存在しない)、まわりがその対処方法をうまく工夫することで、平和に共存しましょうよ、という話。

このブログでも何度も書いているように、私も常々父をみていると、認知症と「年相応のボケ」とは明確に違う物じゃないと思う。父がだれか家族と暮らしているならそれほど困ることはないのに、今こうやって頭を悩ましているのは、父が一人暮らしだからという一点に尽きるのだから。そういう意味では、認知症は社会的な病と言われるのもうなづける。

この本でも、困っているのは患者本人よりも家族でしょ?と、治療が必要なのはノイローゼ尾になっている家族の方じゃないかという話や、やたらに心配しすぎないで「放置プレイ」というのもありだとか、「ボケと闘わない」ための方法も提案されている。

「最近の介護のトレンド」は、パーソン・センタード・ケアなのだという。認知症本人を尊重し、その人の視点や立場を理解し、ケアをしましょうとう考え方。それは本人の幸せということだけじゃなく、結果的にケアがうまくいい、困る症状が緩和されるという意味では、介護をする人にもメリットがあるのだという理屈は分かるけど、自分自身も日々の暮らしがある中でそれを実践するのは難しいというのが実感。

こちらの近藤さん、今は亡き実父が認知症で、死後にその苦悩を綴った日記(メモ)が出てきたことが、今自分がこの仕事に関わる原動力になっているという。その直筆の写真が巻末に掲載されているのだけれど、それを読むと、きっとうちの父も同じような感じなんだろうなぁと心が痛む。

自分自身が介護する上では難しい面はたくさんあるけれど、せめてこういう理解のある医師や専門家に見守ってもらえる環境をつくれれば、認知症介護もずいぶん違ったものになるとは思う。

認知症の薬や医療との考え方なども分かりやすく書かれているので、興味のある人にはオススメです。




2017.08.24 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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