在宅看取りについて

昨日、NHK関東ローカルの「金曜イチから」という番組で、「後悔しない 自宅での看取(みと)り」というテーマを扱っていた。


この1年ぐらい終末医療について関心を持つ中で、在宅看取りについても選択肢にいれていただけに、興味深く見たけれど、番組を観た感想はモヤモヤだけが残った。

番組では、実際に在宅で看取ったケースを取材、在宅医療に関わっている医師、自宅で親を看取った経験を持つ故永六輔氏の娘さんをスタジオに迎え、基本在宅看取りのいいところばかりを紹介した内容だ。番組中に画面下に出てくるTwitterのコメントにもあったように、介護者側の苦労や負担についてはほとんど触れられてなかった。そして、「自宅での看取り、数年後には当たり前のことになっていることかもしれない」というエンディング。

実際、少子高齢化が進む中、医療費や福祉にかかる費用を抑えるために、国は在宅看取りを増やそうとしているらしい。そのために、在宅医療の制度などが拡充されるなど環境が整っていくことは良いことだと思う。

ただ、問題はこの「在宅看取り」というのは、家族の負担が大きいことだ。昔のようにずっと三世代同居で暮らしてきたわけでもなく、離れて住んでいて日頃あまり顔を合わせることがなかった子世代がこれをやるのは、かなりの無理がある。そもそも独身や子供のいない人が急増しているなか、いったい誰が看取るというのか。

私自身、母の終末期を考える際に在宅看取りも考えなくはなかった最大の理由は、一日でも長く父のそばに置いておきたかったから。それは、優しさというよりは、母が寝たきりになって何もできないとしても、同じ屋根の下にいていつでも顔を見られる状態であれば、認知症の父の世話も最小限ですませるためという、こちら側のエゴだった。(今、病院でひとり寂しく寝ている母のことを考えると、もし自宅にいたら、24時間誰かの気配を感じられるだけでも、ずいぶん心は安らぐのだろうなとも思うけれど。)

そもそも私自身は実家に同居するつもりも、両親を家に引き取るつもりもまったくなかった。姉にしても、いっしょに住むことはあっても会社を休んだり辞めたりするつもりはない。それでも「在宅」の可能性を探った背景には、在宅医療の医師や介護保険の訪問看護師などのサポートによって、独居でも自宅で最期を迎えたケースはあると、ケアマネさんから聞いていたから。

さすがに最期は家族がついていないととしても、いよいよ危ないですと言われたら、最期の何日かは泊まり込むことになるんだろうなとか、そのぐらいのイメージだったように思う。

でも、実際うちの場合は、在宅医療をお願いしていた医師に「”判断力のある人間”が24時間いっしょにいられないのなら無理」と言われた。これを言われたのは、母が今入院している緩和ケアの病院に入院した当日のこと。その時点で病院医師に「痛みのケアと栄養補給の点滴が落ち着けば、自宅に戻ることも可能かも」という説明を受けたので、その際にはまた診てもらえますか?ということを、在宅医師に尋ねたときにもらった答えが、「無理です」だった。

結果的には、入院後数日でみるみる寝たきり老人になってしまったので、とても退院できる状況ではなくなってしまったのだけれど。

今になって思えば、確かにサポートの人に来てもらうだけで母の世話をするのには限界があったと思う。この前のように夜中に出血してしまったときも、父はSOSの電話をかけることもできないかもしれない。

つまり、在宅での看取りを可能にするには、在宅医師の言うとおり、介護を最優先で寄り添える家族がいるのが第一条件なのだ。その辺が、私としても認識が甘かったなと思う。

そして、物理的な条件として「最優先に介護ができる」家族がいたとしても。実際にそれをするのはかなりの負担。番組に出てきたように「若い時に苦労かけたから、できるだけのことをしてあげたい」なんていう殊勝な子供ばかりじゃない。大多数の人にとって、親の介護なんてできればしたくない。いつまで続くか分からない介護を、自分の生活を犠牲にして続けることになるのだ。

介護疲れで無理心中したり、体調壊したりという話を聞くと、死んで行く親の世話をするために子供の命を削るのは、「生物」として間違ってないか?と思う。

そんな介護する側の問題にはまったく触れず、在宅看取りを理想的なもののように推奨する番組の作り方に違和感を覚えると共に、これを見た親世代の老人に、「期待」を持たせてしまうのも罪(+迷惑)な話だと思うのだ。

患者本人の意思を聞いておいて、その希望に添ってあげたいと言われても、本人が「最期は自宅で」と望むことが、家族に迷惑をかけることになる可能性は高い。「子供に迷惑をかけたくない」とは思っていても、本当に弱ってきてもなお、自分のことより子供のことを考えられる老人は少ないと、自分の親を見ているとつくづく思う。

今現在のこの番組に寄せられたTwitterを見ても、「苦労をわかってない」「美談にしてほしくない」というような、介護側の人と思われるコメントが多かった(介護される側はTwitterなんてできないか)。そうだよね、みんな同じように感じたのね、と思ったら、モヤモヤも少し解消されたかな(笑)。

2017.09.02 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 介護



コメント

あー私もニュースからTVつけっぱなしだったから見たわ。あんまり番組としていい企画じゃないな…と、思ったわ。「看取り」は、自宅じゃなくても施設でも最後を引き受ける所あります。

2017/09/02 (土) 20:00:03 | URL | おぐママ #- [ 編集 ]

おぐママさんへ

あれを肯定的に見られるのは、たぶん看取られる側のお年寄りだけじゃないかしらー。

2017/09/02 (土) 20:36:28 | URL | びっけ #- [ 編集 ]

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