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読書録:『大学病院の奈落』


ちょっと前の、群馬大学病院での腹腔鏡手術を巡る一連のできごとを追ったルポ。あの事件をスクープしたのが読売新聞で、この本はその記者がまとめたものだ。

個人的には、新聞やニュースで何度も見かけたものの、あまり詳しくは見たことがなかった。医療ミスが続いたのね、ぐらいな認識で。なので、改めて概要を知って、あまりのひどさに驚愕。

ひとりの医師が未熟な技術のまま、練習台の如く次々に難しい手術を試み、次々に死亡させてしまった……。というだけでは、実際どのぐらい未熟なのか、どのぐらい難しい手術なのか、それがどのぐらい特異なことなのか、素人にはよく分からない。いろいろな数字を挙げているけれど、それももしかしたら恣意的に都合のいい数字だけをあげつらっているのかもしれないし、当事者側から言わせたら、また違う事実があるのでは……?

そんな風にも思ったけれど、ざっと探した感じでは、このルポを否定するものは見つからなかったので、誰が見ても妥当な検証だと思っていいのかもしれない。

本書で指摘されている明らかな問題点は以下の通り。

・保険適用の術式ではないのに、患者側にはその説明をせず、裏で不正請求をして保険治療として処理した。
・本来なら院内の倫理委員会に申請が必要な案件を、申請せずに手術した。
・死亡事故が続いても、上司も病院としても、それを問題視して止めることがなかった。

問題の背景には、第一外科と第二外科の勢力争いや学長選挙を前にした政治的な忖度や思惑があったりと、まるで「ドクターX」?というような話が現実に起きていたらしい。

そんな状況で、ひとりの医師の暴走を止める装置がまったく機能しなかったという組織的な問題は根が深い。この例に限らず、医療全体の中ではこれは氷山の一角に過ぎないのかもと想像すると、絶望的な気持ちになる。

難しい事例に挑戦し、場数を踏んで、腕を磨きたいという外科医の気持ちは分からなくもないし、それは医学の進歩のためには必要なことかもしれない。それが長い目で見た人類全体のためには良いのかもしれないけれど、そのために本来は死ななくてもいい人の命がいたずらに絶たれてしまうというのは、許されないことだ。

最新の医療技術はもちろんありがたいものだけれども、それ以上に、その治療に納得できたかどうかは、命の長さよりも大事なことと言えるような気もする。

気が重くなる話だけれど、こういうことが明るみに出ることで、少しでも患者本位の医療が定着してくれることを望むばかり。




2018.04.02 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 読書録



コメント

この大学の医学部に娘の友達(女子)が入学して一人暮らしして頑張ってるのよね。
確か入学早々その事件があって「おいおい」って思ったからそういう意味で他人ごとじゃない。
大学病院って、病院だけど教育機関、研究機関でもあるって特殊だよね。
患者に対しての責任もあるけど、
一生懸命勉強して医学を学ぼうと希望に満ちている若い学生達に対する責任ていうのも大きくて重い!と思います。
自分ではたぶん読まないので、いろいろわかって良かった(笑)。
その、娘のお友達が何科かも知らないんだけど、でも、大学の評判が落ちて辛い目にあったりしないように祈ってます。

2018/04/03 (火) 00:47:41 | URL | YUcana #jcOaHd1Q [ 編集 ]

YUcanaさんへ

興味深かったけど、この本自体はちょっと、同じことが何度も出てきたりしてまどろっこしかったから、わざわざ読むまでもないかも。

2018/04/03 (火) 10:08:33 | URL | びっけ #- [ 編集 ]

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