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読書録:『「健康第一」は間違っている』


刺激的なタイトル。だけど単なる煽りじゃなくて、著者の一番言いたいことがそれなのだ。

アンケートによると多くの日本人が幸せの要因とあげるのが健康。そして日本は世界でも有数の長寿国だ。でも、幸福度調査にあらわれるように自分を幸せだと思ってない人が多い。世界一健康なのになぜ幸せじゃないのか?

その答えは、食欲ならたくさん食べればもうお腹いっぱいで食べられなくなるのに対して、「健康欲」「生存欲」は満たされることがないからだという。今は健康でもいずれ病気になるのではないか?という不安を抱えて、平均寿命がいくら伸びても満足しないのだと。

人間は必ず死ぬ。それなのにあたかも不老不死を目指すような健康や長寿が人生の第一目的になってしまっているのはおかしい。極論すれば、食べたいものを我慢して健康のためだけに生きるより、やりたいことをやって食べたいものを食べて早死してもそれはそれで幸せじゃないか、という論理だ。

これ自体は、わからなくはない。健康、長寿だけが善という価値観に踊らされて、結局健康食品やサプリの会社を設けさせてるだけだというのも同感だ。

ただ、具体的な例として批判している部分はちょっと違和感も。高齢者の降圧剤投与(高血圧治療)や認知症の早期発見が無意味だというのはいいとして、、乳がん検診は必要ないという点は素直には受け入れられない。データを用いて説明している部分は、論理的ではあるものの、個人的な見解にひっぱられている感じもするし、まだらっこしくも感じる。

そして、一方で子どもへのワクチン投与に公費が十分使われていないということを、細かいデータを挙げながら力説するんだけど、これもなんか唐突で、結局それを言いたくてこの本を書いたのかな?と思ったり。

著者は僻地医療に携わった後、今は開業医のクリニックとして在宅看取りなどもしているらしい。おそらく、健康や長生きにしがみつく高齢者の例をたくさん見てきたことで、いろいろな矛盾を感じているのかもしれない。

昔は医術が呪術に近かった頃は「死ぬことを前提にした医療」だったのが、科学の進歩によって「死なない医療」中心となってしまった。でも高齢化社会の今、改めて「死ぬことを前提とした医療」にも立ち返る必要があるというのは、まさに今延命治療の是非が問われたり、緩和医療や終末期医療の必要性が増してきていることを言い表している。

長寿じゃなくても、とりあえず健康ではいたい(だって痛い苦しいは嫌だもん)という視点がスルーされているのは気になるけれど、方向性としては興味深い本だったと思う。

2019.11.12 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 読書録



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