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読書録:「悪人」

悪人悪人
(2007/04)
吉田 修一

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偶発的に起こってしまったある殺人事件。被害者、加害者、そしてその周りの人たちの心情を描きながら、その事件の前後を描いた小説。ぶ厚い本だけど、続きが知りたいので、ずんずん読める。

冒頭で犯人の名前が客観的に明かされるので、犯人捜しのミステリーではない。なぜその事件が起きてしまったのかということが、だんだんと解き明かされてくる、という形態だ。関係者それぞれの立場を一人称で語らせることで、被害者や加害者の人物像が描かれていて、層の厚い物語という印象。

「悪人」というタイトルは、加害者が一方的に悪い人である、という一般的な先入観に疑問を投げかけたかったのかな。

実際、この物語では、被害者になってしまった女性も、自業自得的な描かれ方をしているし、逆に犯人の男には同情的な視線で描かれていたりする。だから、犯人が悪くない、というのではないのだけれど。

この手の事件に関係したことのある人にとっては、その立場によって、いろいろな見方ができてしまうのかも。

物語の舞台は九州で、セリフは全部九州弁。出会い系サイトとか、風俗店とか、老人を騙す詐欺とか、「今風な」社会的な背景もまじえつつ、地方の若者ならではの独特な雰囲気を感じさせる。そういう意味で、謎解きとかストーリー展開とかよりも、登場人物それぞれが持っている空気感みたいなのが、ものすごく印象に残った。


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関東在住で松田聖子と同じ年。パソコン系のライターをしてます。メールはこちらからどうぞ。

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